行政組織における組織風土改革実態調査

私たちにとって印象深い出来事は、去る11月に「経営行動科学学会」年次大会シンポジウムの出講です。このシンポジウムでは、これまで個別の自治体を支援しながら得てきた問題意識をもとに、全国の自治体(人口1万人以上の1362団体)を対象に行なった「行政組織における組織風土改革実態調査」の結果(509件の回答)の中間報告をさせていただきました。また同時に、首長や専門分野の異なる教授とも意見交換をすることができました。

シンポジウム後には「行政組織における組織風土改革の実態と課題」をテーマにした対話会で、参加いただいた皆様と、シンポジウムでの報告内容の一部を共有しながら意見交換をする機会もいただきました。
この対話会の場では、参加者からさまざまな声をいただきました。その声を少しご紹介しましょう。

参加者の声

・「調査結果にあった『自治体(地域)と行政組織(役所)の境界線が不明確で、両者を混同していること』や『職員の意識改革は認識していても、組織風土改革の認識や重要性はまだほとんどしていないこと』について、自組織にもあてはまるところがあり、新たな気づきとなった」
・「庁内全体で改革の必要性や方向性をどのように共有するか。この重要性を幹部が多忙であるという理由から、なおざりにしている」
・「組織風土改革にあたり、課などの組織ビジョンを明確にする必要があることを知り、新たな発見がありました」
・「トップの状況によってすぐに改革が進むとは限らないが、改革力、モチベーションをもてる力を蓄えておくことが有用と思われた」

行政組織においては全国共通に改革メニューを実施していることが多くありますが、その運営のしかたには自治体間で大きな異なりがあります。今回の調査からは、マニフェストに掲げた首長の意志が、その運営の違いに影響していることなどが見えてきました。そして、これら行政組織の全国傾向を見ることが、参加者の皆様が自組織の特徴を再認識することにつながったようです。

一方で、「目標の共有化が必要ですが、市全体になると範囲が広く総花になって、職員が共有できるものになりにくいように思います。簡素なものができればと思います」とのご意見もいただきました。今後は、より実践レベルで具体的に問題を把握したり、解決に向けた課題を考えやすくなるよう、組織診断するシートを開発し、皆様に提供することを検討しています。また、よりよい役所づくりを進めておられる自治体については、その実態と成功要因を分析する調査の追跡・継続を行なって、皆様の運営改善に役立つフィードバックをしていきたいと思っています。

迎える年が皆様によい年となりますように、また、ともにより一層のチャレンジができる年となりますよう、引き続きよろしくお願いいたします。