統合効果と人事施策の成果を確認し、
業績を高めるための組織開発

住友重機械ギヤボックス株式会社
企画管理部 人事グループ グループリーダー
(現 住友建機株式会社 管理本部 人事部 部長)
小塚 昭彦さん

 

住友重機械ギヤボックス株式会社
企画管理部
人事グループ
伊藤 天音さん

 

製造現場のPRIDE PJ

住友重機械ギヤボックス(GB)は大阪府貝塚市に本社を置く大型特殊減速機のメーカーで、住友重機械工業のなかでギヤモータ、減速機などを製造・販売するPTC事業部の子会社となっている。

住友重機械GBは、1916年創業の大阪製鎖造機が2006年に住友重機械工業の完全子会社となり、2017年にPTC事業部ギヤボックス部(岡山工場)と経営統合して現在の体制となった。貝塚と岡山に工場があり、従業員約500名のうち貝塚が約300名、岡山が約200名となっている。

2019年から同社企画管理部で人事を担当する小塚昭彦さんは、社内の状況を次のように説明する。
「組織風土の違う2社が経営統合したので経営課題があり、一体感をもってシナジー(統合効果)を生むために数々の人事施策をチャレンジ的に打ってきました。なかでも組織開発は不可欠だと考えて、PRIDE PJに取り組んできました。自分たちの組織をよくするための深い対話は、これまで打ってきた人事施策の成果を確認するうえでも大きな意味がありました」

PTC事業部の時代も含め、同社では2016年からコーチング、傾聴、1on1、キャリアプランなどの研修を実施して、組織力の向上に努めてきた。PRIDE PJの活動によって、組織の変化や人事施策の成果を確認できるという。

住友重機械GBは24年8月にPRIDE PJの活動をスタートし、25年7月に第1期が終了した。

第1期の推進メンバーは、製造現場の班長、職長クラス6人で、年齢層は30代が中心だった。
「コロナ以降はどこも飲み会が減ってコミュニケーション不足だといわれます。しかし、組織開発の対話やオフサイトミーティング®は、飲みニケーションとはまったく別ものです。飲み会は親睦を深める効果はあっても、本当に深い話は出てこない。話してもすぐに忘れてしまう。対話の場はオフィシャルな会議と飲み会の中間で、どちらともコミュニケーションの質が違うし、組織の血流をよくするうえで非常に効果が高いと考えています」(小塚さん)

第1回から第3回までの対話で、現場では班ごとに壁があって他の班と互いに応援体制が築けない、班長への支援が充分ではないなどいくつもの課題が確認された。経営統合の影響が、働く人たちにモヤモヤ感を与えているといった指摘も出た。

また、生産技術が製造部門のなかにあることで問題が生じているとの意見が出て、後の組織変更につながっている。PRIDE PJの対話がその場だけの意見交換にとどまらず、小塚さんはじめ上層部の対応によって実際の組織運営に影響することを推進メンバーに強く印象づけた。

対話内容は議事録にまとめ、活動スポンサーである三輪晃久社長はじめ上層部に報告された。三輪社長が議事録に目を通し、毎回コメントを返したことは推進メンバーの意欲を引きだす結果となった。

また工場長も、推進メンバーによる「業績や経営指標の数字だけを示されてもわかりづらい。数字の意味を端的に説明してほしい」といった意見を知り、発信情報のスタイルを変更するなど素早く対応した。

このとき意外な認識の違いも明らかになった。ここ数年、住友重機械GBの業績はよく、利益率を見てもメーカー平均が3%前後であるのに対して同社は6.7%と高水準にある。賃上げも毎年つづき、15%ほどアップしている。

業績は絶好調であるのに、残業が減って忙しさが緩和されたことから、現場では「うちの会社、大丈夫だろうか?」と心配の声があがっていたという。目の前のものづくりに集中するあまり、会社全体の経営状況や業績まで意識できていなかったことが明らかになった。裏返せば、PRIDE PJの対話を通して自分たちの視座が高まっていることも確認できた。