活性化する対話の場

第4回あたりから、推進メンバーは対話にも慣れ、活動は軌道に乗りだした。

企画管理部人事グループの伊藤天音さんは、小塚さんとともに推進事務局としてすべての対話に参加した。
「事務局のお話があったときは、入社2年目の私に何ができるのだろうと思って、他社さんの事例などを勉強しました。初めは不安でしたけど、回を重ねるごとに対話の場が活性化してくるのがわかりました。メンバーのみなさんが会場に入ってくるときの『お疲れさまです』という声の調子がハッキリ変わってくるんです。貴重な経験でした」(伊藤さん)

第5回から「職場のありたい姿」を語りあうフェーズに入った。製造現場は日々の改善を得意としても、未来の職場を描いて言語化することに慣れていない。スコラ・コンサルトが示した手順に沿って、職場のありたい姿を描いていった。

第8回では、ありたい姿と到達するためのアクションを検討するなかで、「若手社員がいきたい職場」の話題が出た。ある班長の職場が若手社員から「楽しそう」といわれるので、班長自ら指導方法などを説明して共有した。ポイントとなるのは、楽しさと厳しさのメリハリが大切ということで、若手社員に気を使いすぎて厳しさが不足するとかえって職場の魅力は損なわれると説明された。この考え方はありたい姿に反映され、「時に厳しく」のひと言が加えられることになる。

職場のありたい姿を描くなかで、会社方針がよくわからないという声があがった。自分たちだけで対話しても、会社方針とマッチするかどうかは判断できない。

そこで、末永正浩工場長兼製造部長、田辺史暢副部長をそれぞれ対話の場に招き、意見や方針を聞くという案が出た。班長、職長クラスが上層部と直接的に意見交換する場は異例といえる。

25年3月に開かれた実際の対話は、お互いに緊張することなくなごやかに進み、率直な意見交換ができる場となった。たとえば、現場ではロボット化がはじまったことに「自分たちは不要になるのか」といった不安があった。工場長にロボット化の方針を尋ねると、「実験的な取り組みで、製品特性から雇用が減るような心配はない」と回答があって推進メンバーが安堵するといった場面もあった。上下のコミュニケーション不足があらためて認識される結果となった。

また、短期間のローテーションによって若手が育ちにくいという推進メンバーからの指摘があり、上層部と小塚さんが教育方針を見直すという具体的な成果も出ている。

6月11日に開かれた最終報告会では、三輪社長はじめ上層部の前で推進メンバーがこれまでの対話から取りまとめた内容を報告した。会社方針の多能工化推進を受けて自分たちが考えた新人教育プログラムを提案するなど、高い成果を示すことができた。

事前準備を慎重に進め、発表の役割分担や対話のシミュレーションを検討し、前日にリハーサルを実施したことも成功につながった。
「当社では人事施策が業績向上につながったので、PRIDE PJも非常に有意義な活動だという共通認識があります。本社の組織開発グループは丁寧に伴走支援してくれますし、スコラさんは絶妙なタイミングで介入して対話を進めてくれます。第三者の支援というより、一緒に考えていく姿勢は成果に大きく影響したと実感しています」(小塚さん)

製造現場の推進メンバーによる対話が組織運営に影響を与えた実績は大きく、第1期の成果が今後のPRIDE PJに引き継がれることが期待されている。

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