インタビュアー
三好 博幸[株式会社スコラ・コンサルト プロセスデザイナー]
人材開発だけでなく「組織を育てる」人的資本経営戦略
三好:組織開発チームが発足したのが2022年4月ですから、3年半ほど活動されてきたことになります。そもそもみずほFGとして組織開発に取り組もうとされた理由は何だったのでしょうか。
渡邊:2021年度に当時のCHRO(人事担当役員)から、人事グループは「組織を育てる」という観点でも各部店の体系的な支援に着手しようと提案されたのがきっかけでした。
人事グループは長らく人材開発を中心に活動してきました。〈みずほ〉にフィットする優秀な人材を採用し、異動を重ねて経験を積んでもらい、相応のポストに登用する、という大きな流れに沿って、個人の成長ステージに合わせたアプローチで教育研修などを提供してきました。
金融機関は社会・お客さまの信頼のうえに成り立つ業種であり、多くの規制があるため、時に小さなミスも許されないという業務特性があります。決められた手続きを守るために、どちらかといえばトップダウンのマネジメントがフィットする時代が長くつづきました。

しかし外部環境の変化が激しくなるのに伴い、環境に適したビジネス戦略を立て、組織体制を変更していくのが当たり前になりました。また、社員の就業観、仕事の価値観、あるいは働き方などもより多様化しています。人材開発だけでなく、多様な社員が活躍できる組織づくりとして「組織を育てる」取り組みが必要となったのです。
最初は人事グループ内で20人ほどの有志メンバーが集まり、組織開発の勉強会などからスタートして、その後グループ全体で400人ほどの規模がある人事部門で試してみました。一定の効果が期待できたので2022年度に専任チームをつくり、主要5社の活動として展開してきたというのがおおよその流れです。
グループ内の組織開発展開を統括する推進事務局体制
増田:私たちのチームは、みずほFGの人事グループに属し、みずほFGだけでなく、みずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券、みずほリサーチ&テクノロジーズの主要5社について、組織開発を推進する部署となっています。
〈みずほ〉では部と支店を合わせて「部店」と呼んでいますが、国内の約800部店が対象になります。部店の規模は20人ぐらいから600人ぐらいまでありますが、70~80人がボリュームゾーンです。
三好:全国の約800部店が対象で、何人の方が担当されているのですか。
増田:実務で組織開発に携わっているのは、担当者4名とライン統括と呼ばれる1名の計5名です。ほかに、社内兼業制度でグループ内の他部署からきている5名がいます。主要5社内で公募し、希望者が1年間、週1日程度を他社や他部署で働くという制度です。うれしいことに組織開発チームは応募者が多く、選考の結果、5名に兼業してもらっています。昨年も5名でした。兼業者は人事担当者でなく、支店などで営業や事務を担当している人がほとんどです。

三好:本務、兼務あわせて10名の組織開発事務局体制で主要5社の組織開発を推進しているわけですね。最近日本でも組織開発の専任部署を設ける大企業が増えていますが、そのなかでもしっかりした体制を組まれていて、取り組みに対する会社としての本気度が感じられます。また、社内兼業制度をうまく活用して、グループ各社の組織開発実践人材を養成する機会にされていますね。
増田:社外の専門家にすべてをお任せするのでなく、インハウスの事務局がある意味は大きいと思います。グループ内の事情、業界の事情がわかっていなければ、組織開発の支援も難しいでしょう。ただし、組織開発の専門的なところは外部の方の力も借りています。
渡邊:私たちが企画・推進しているプログラムの設計やサーベイの実施に関しては複数の外部専門家に協力していただいています。言い方はおかしいですけど、それぞれ芸風(強み)があって勉強になります。(笑)
三好:取り組み当初は、そもそも何をどこから手を着けていいのかわからないということがありますから、事務局に伴走してくれる外部専門家の協力を得ることは必要ですね。そこから多くを吸収して、事務局だけで自走していけるようになることが重要です。
人材・組織開発部
組織開発チーム 兼 ダイバーシティ・インクルージョン推進室
ディレクター