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後編は、非言語コミュニケーションの感覚が鋭敏な空間、他者との相互作用の中で確認されるZ世代の「私」、自己表現の手ごたえを持ちながら形成されていく生き方について考えてみたい。

ビジュアルコミュニケーションと言葉への敏感性

Z世代は、断定的な言い回しを避ける傾向がある。「知らんけど」というフレーズが流行したのも、意見を述べながらも、相手への配慮や解釈の余白を残すためだろう。そこには、複雑な情報や感情をできるだけシンプルに、かつ“衝突を生まない”形で伝えたいという意識がある。

また、「エモい」のような感覚的な言葉を好み、ビジュアル中心の情報を重視するのも、情報過多の時代を生きるZ世代ならではの特徴だ。膨大な情報が流れるSNS空間では、すべてを論理的に処理することは現実的ではない。そのため、瞬時に雰囲気や感情を共有できる言葉や視覚的表現が選ばれる。

さらに、SNSでは、些細な言葉選びが炎上へと発展する危険性もつきまとう。その環境で育ったZ世代は、言葉のニュアンスに極めて敏感で、神経を使う。テキストは単なる情報ではなく、態度や価値観を可視化するものだからだ。

Z世代にとってSNSは、もはや単なる情報収集ツールではない。「見る」という感覚を通して、その先の世界を感じ取るインターフェースである。SNSは「絵」のように知覚され、時に癒しを、時にインスピレーションをもたらす存在なのだ。

オンライン空間で培われてきた、こうした言葉への敏感さは、他者を傷つけたくないという慎重さの表れであり、一種の優しさでもある。しかし同時に、それは常に炎上のリスクを意識せざるを得ない不安とも隣り合わせにある。
Z世代のビジュアルコミュニケーションは、優しさと緊張感の上に成立しているといえるだろう。

バズりSNSの変化と傾向

2024年、若者の間で注目を集めたSNSの一つが **BeReal.** である。
1日に一度、ランダムな時間に通知が届き、「今この瞬間」を2分以内に撮影して投稿するという仕組みだ。撮影は外カメラと内カメラの同時使用。2分以内に投稿しなければ、友だちの投稿を見ることができない。
通知が来る時間は予測できない。食事中でも、授業中でも、移動中でも、どんな瞬間であっても“今”を求められる。常に切り取られる可能性がある日常。その緊張感さえも含めて、このSNSは若者の間で支持を集めている。

BeReal.が注目される以前、中心にあったのはInstagramである。「インスタ映え」が流行語になったことが象徴するように、そこでは“日常を美しく編集”して提示する文化が形成された。

カフェに行った時、可愛いものを買った時、少し嬉しかった出来事をストーリーや投稿に上げる。多くを語らず、ビジュアルで語る。そこでは、ビジュアルを中心とした非言語的コミュニケーションが主流となった。
Instagramが広く浸透したのはこの10年ほどである。

さらに一世代前に遡ると、旧Twitter(現X)の流行があった。
そこでは、“日常で思ったことや感じたことを短い文章で即座に発信”する文化が育まれた。視覚よりも言語、編集よりも衝動。いわば、人間の「内面」をそのまま外に出すプラットフォームが支持を得ていた。

こうして振り返ると、SNSで重視されるものは
「つぶやく(内面)」→「見せる(編集された日常)」→「切り取られる(無加工の現在)」
へと移り変わってきた。
SNSのトレンドの変化は、単なるアプリの流行ではない。若者がどのように自己を表現し、他者とつながろうとしてきたのかという、価値観の変化そのものなのである。

Z世代は、自己肯定感が低い?

Z世代同士で話していると、時どきこんな会話になる。
「私たちって、なんでこんなにSNSを使うんだろう?」
「なんのために、こんなに投稿しているんだろう?」

その中で、ふとこんな声が上がる。
「私たち、自己肯定感が低いと思う……」

なぜ、そう感じるのだろうか。なぜ、日常を他人にシェアしたくなるのだろうか? 一つの仮説として考えられるのは、「自分の感覚を客観的に保証してほしい」という欲求である。

たとえば、自分がかわいいと思ったもの、素敵だと思った瞬間をInstagramに投稿する。そして、どれくらい「いいね」が集まったかを確認する。つまり、どれだけ人が反応してくれたかを見る。その承認を通して、「私が感じたこの感覚は間違っていなかった」と安心することができる。
他者からの反応を経て、ようやく自信が補強されるという心理である。

デジタルネイティブとして育ったZ世代は、小さな頃から、発言や投稿に対して「いいね」やリアクションが返ってくる環境の中にいた。評価や承認が数値化され、可視化される世界。その中で育った世代は、知らず知らずのうちに、他者からの細かなフィードバックを基準の一つとして自分を測るようになっているのかもしれない。

しかしそれは、単純に「自己肯定感が低い」ということなのだろうか? 自分や身近な同世代の意識に照らしてみると、なんとなく感覚的にフィットしない。
もしかすると、Z世代は自己肯定感が低いのではなく、「自己を社会の中で調整しながら確かめる世代」なのではないか。自分の感覚を完全に内側だけで完結させるのではなく、他者との相互作用の中で形成していく。
承認は弱さの表れであると同時に、つながりへの欲求でもあると考えるほうがしっくりくる。

Z世代のSNS利用は、自己肯定感の欠如というよりも、オンライン空間に出現した新たな社会の中で「他者と共に自己を構築していく生き方」の表れなのかもしれない。

Z世代の消費行動と自己肯定感

Z世代はモノを買う際、非常に慎重に商品にまつわる情報を調べる。価格や品質、レビューやインフルエンサーの意見、友人のアドバイスなど、あらゆる情報を集めた上で購入する。このプロセスを経ることで、後悔や失敗を避け、満足度の高い消費をめざしている。この周到な情報収集は、単にモノを手に入れるためだけではなく、それが本当に自分にとって価値のあるものかを見極めるための重要なプロセスでもある。

日常の消費には慎重である一方、Z世代は自分を満たすための消費には惜しみなくお金を使う傾向がある。特にアイドルやアニメ、ホストなど、推し活にかける金額は大きい。自分が応援する対象には積極的に投資するが、生活必需品や必要性を感じないものには極力お金をかけない。これは「消費の意味」を重視し、それを判断基準に優先順位をつけるという合理的な考え方から来ている。

同時にもう一つ、買物にあたって「本当にこれを持つ必要があるのか?」と自問することが多い。たくさんの情報の中から商品の用途や機能、利便性などを自分のライフスタイルと重ねながら確認し、「何を選択するべきか」を慎重に判断する。欲しいものすべてを手に入れることは難しいとわかっているため、支出に対して高いパフォーマンス(満足度)を求め、無駄な消費を極力避けようとする。

さらに、消費によって得られる自己肯定感も重要な要素である。
かつては、モノやブランドを所有することが社会的ステータスの象徴とされていた。しかし、Z世代にとっての消費は単なる所有目的ではなく、自己表現の手段でもある。たとえば、推しにお金を使うことは、自己満足や自己肯定感を高め、周囲からの共感を得ることに通じる、といった具合である。

このように、Z世代の消費行動は、情報収集を徹底し、自分にとって本当に価値のあるものにお金を使うという特徴を持つ。彼らにとって重要なポイントは、無駄な消費を避けながら、自己満足や自己肯定感を高めることにつながる投資なのである。

[参考文献]
宮本直樹 Z世代を読み解く(4)~若手のモチベーションを高めるコミュニケーション(2)~ (2024.4.16)
廣瀬涼 Z世代の消費を読み解く5つのキーワード (2023.4.17)