この本を出版するに至った経緯と思いについては、先月号のコラムをご覧ください。
先月号のコラム

また、「自治体通信オンライン」の自著書評コーナーでは、本のエッセンスを紹介しております。
「自治体通信オンライン」の自著書評コーナー

なお、お寄せいただきました本の感想は、順次HPでもご紹介させていただきます。
お寄せいただきました本の感想

公務員には、後付けキャリアがよく合っている

行政組織には公権力を扱う仕事があることから、人事異動を予め約束したり、通知することが困難なため、公務員の方にとってはキャリアを前もってデザインすることが難しいという状況があります。
そこで、本書では、偶然の出来事が人のキャリアに大きな影響を及ぼすことに注目し、予想外の出来事が望ましいものであるとする「プランドハップンスタンス理論」を活用して、「後付けキャリアデザイン」を提案させていただきました。

このことについては、現在行なっている「公務員のオフサイトミーティング活用セミナー」の参加者から「この本の中で一番自分にピッタリ来る言葉だった」との感想をいただきました。
また、NPO法人自治体改善マネジメント研究会で企画した出版記念イベントでも、若手の職員から、「これまで自分が考えているキャリアの悩み、異動であきらめていたことを支えてくれた本で、勇気をもらえました」との言葉を聴くことができました。

元県職員で、現在町長職に就かれている白石さんからは、「7名の方の実践事例をその時代の自分と重ねて読みました。10以上の系統の違う部署に勤務し、初めて出会う課題にチャレンジし、その経験を活かして新しい部署での課題にチャレンジする、そんな繰り返しでした」との感想をアマゾンレビューに掲載いただきました。ご自身のキャリアを思い浮かべてお読みいただいたことが伝わってきます。
そして、幾多のご経験があればこそ、現在町長というお立場に就きながらも、職員の取り組みをきっと自分事のように感じながらマネジメントされていらっしゃるのではないでしょうか。

経験があることと、“キャリア”として認識していることは違う

事例を執筆したメンバーからは、「自分が経験した改善事例を書いてと言われたけれど、いざ書くとなると、何を書けばよいのだろうかと、最初ずいぶん悩みました」と執筆時の戸惑いを聴くことができました。
また、本を読まれた職員からは、「自分もこれまでの職場で改善や改革に携わってきたけれど、それは組織でやったことなので、どれほど自分の力になっているのかというと自信がない」という言葉も飛び出しました。

確かに、本書でキャリアマップのベースとして示した改善活動の12場面は、事例執筆を依頼するときから用意していたものではありません。
7人の職員には、(1)最初に改善に関心を持つようになったきっかけとなる体験、(2)自ら主体的に改善に取り組んで成功した最初の実践事例、(3)よりステップアップした改善に取り組んだ実践事例、これら3つの事例を紹介して下さいと依頼しただけでした。
どんな事例が出て来るのかは、私も寄せられた原稿を見て初めて知った次第です。

集まったさまざまな事例を読み、そこにどんな共通項があるのだろうか、また、どんな違いがあるのだろうかと、事例とにらめっこしながら読み解き、見出したのが組織変革のメソッドとなる全体像、「改善活動の12場面」でした。
それゆえ、当然執筆者のみなさんも、自分にどんなキャリアがあったのかは、ここにプロットされたご自身のマップを見て、改めて「へぇ~、自分って、そういうキャリアだったんだ」とか、「確かに、言われてみればそうだな」と認識されたのではないかと思います。

キャリアマップの活用方法

中央省庁で業務改善担当をしている十文字さんは、「漠然とした思考を極めてクリアにさせられました(目から鱗)」として、特に3つのポイントを挙げ、その内の一つとして、「改善活動を、変革レベルと活動ステージの2軸を用いて、その度合いにより、12場面での整理方法を示してくれたこと(このマトリクス表が秀逸で、
自分が取り組んでいる活動のポジションを意識することにより、採るべき手法、PDCAサイクルを回す上での進め方の方向性が見えてきます)」と、このマップがこれからの取り組みに役立つ可能性を
持っていることを教えてくださいました。

恐らく、後付けキャリアと言っても、現場で取り組む渦中にいたご本人にとっては自らやることに精一杯で、なかなか客観視してその価値をとらえにくいものでしょう。そのため、業務改善担当や上司、また、人事担当者の方のほうが、組織全体を見て活動のポジショニングをとらえることができ、これからの先行きや、そこにすでに経験のある人を紹介する可能性を高く持っているはずです。
これから先、ご本人はもとより、上司と部下が1on1の機会などを活用して、部下の話を聴く中で、上司が取組を理解し、支援するマネジメントツールとしてご活用いただける可能性があるのだと思います。

改善には、一人ではなくチームで取り組む

最後に、人吉市の溝口さんからは、「改革改善は決して特定の部署や職員の仕事ではないことがわかると思います。 老若男女に関わらず、モヤモヤ、モンモンとしている同業者の方々にオススメです」との
ご推薦をいただきました。「袋小路に入って突破口を求めてもがいている時」たまたま届いたこの本が、現状の壁に小さくても風穴を開ける手がかりになれば幸いです。

本書は、業務改善についてその手法を示したものではありません。しかし、その変革を進めていくプロセスにおいて、どの場面でどんな能力が求められ、発揮することが期待されているのかについて、社会人基礎力の12の能力指標を用いて解説しています。
独りですべての能力を持ち合わせ、発揮できる職員はめったにいないでしょう。しかし、自身のキャリアマップを持ち、変革プロセスのフェーズを意識できるようになれば、いつ、どこで、どんな人の助けを借りればよいのかを目論むことができるようになります。そうすれば、袋小路に入っても、悩みを抱え込まず、抜け出す手立ても見つけやすくなってきます。

職員一人ひとりのキャリアを把握するところから、仕事をよりよく変えていく取組の仲間づくりと改善の実践に本書が役に立ち、キャリアアップにつながればうれしく思います。
そして、「自分はどうだろうか?」と思う方に向けて、ご自身のキャリアイメージを描きやすくなるように、これから100人のキャリアマップづくりにチャレンジしてみたいと思っています。

引き続きみなさまからのご感想、読書会やセミナーなどのご要望、キャリアマップの作成にトライしてみたい方からのご希望など、お気軽にお寄せいただけますようご連絡をお待ちしています。