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一人で悩む時間はもったいない
~思考停止状態から抜け出すための「つながり」の場

2017年10月30日

仕事の中で、人は一人でどのくらい悩むのでしょうか。


隣の席の人に聞けば、3分もかからずに解決する問題でも、一人で抱え込んでしまうと、解決までに何日もかかることがあります。
そうこうするうちに忘れてしまって、後でひやりとすることもあるでしょう。
解決しようと考えているうちはまだいいのですが、悩みの中に入り込んでしまうと精神的にもきつい。

最近、仕事のストレスで精神的に追い詰められるビジネスパーソンが増えてきたのは、悩みをさりげなく受け止めてくれる相手が身近にいないこと、会社や組織の中で相談し合える関係が減ってきたこととも関係があるのではないかと私は思っています。

もともと日本の会社では、「人の和」や「仲間」を大事にし、同僚同士もお互いが面倒を見たり世話を焼いたりして仕事をする精神的な支えの文化がありました。

上司と部下が居酒屋で酒を酌み交わすのが当たり前だった頃は、部下から上司に悩みを打ち明けることもできたし、上司のほうでも気軽に部下の相談に乗る。
こうした親密なやりとりは、たとえ悩みの直接的な解決にはつながらなくても、部下のモヤモヤした気持ちをすっきりさせる効果はありました。
悩みを話すことによって、一種の浄化作用が働くからです。

ここで大事なのは、身近に「話せる」「聞いてもらえる」相手がいた、人と人とがつながっていた、という点です。


●悩みや失敗の現実に直面すると、人は孤立・停滞しやすい


個人的な話をすると、私は「悩みがなさそうに見える」とよく人に言われます。
悩みがないわけではないのですが、悩んでいるように見えにくいのは、私がその状態を受け入れ、気持ちを早めに切り換えるように努力しているからかもしれません。

いったい何を悩んでいるのか、なぜ苦しいのか、どうしたら解決するのかを自分で考え抜くことも大事ですが、悩んだところで解決しない問題をいつまでもくよくよと考えているだけでは時間のムダになる。
だから私は、すぐに相談したり、場合によっては悩みをもたらしている相手に正面からぶつかってみる、といった行動をとるのです。


今でこそ私はこうですが、かつて、仕事で大きな失敗をしでかして、自分の至らなさに悩み、足元ばかり見て歩くような日々を送ったことがありました。

ある大学の先生と食事をする機会があり、たまたま悩みを話してみたところ、「めったにできない、いい経験をしたんだね」「悩むことないよ、世界から見たら、長い人生の中では、そんなことは小さな失敗だよ」と笑顔で返されたのです。

そう言われると、なるほど、戦争が起きているわけでも、命をとられる話でもないんだ。
今という部分だけを見ていると、どうにもならないような現実に見えるけれど、自分が80歳になった頃には、そんなこともあったかなと思い出す程度の「点」の出来事にすぎないかもしれないと、まるで憑きものが落ちたかのように気が楽になりました。


急に明るくなったとは言いませんが、そのちょっとしたやりとりをきっかけに、前に向かっていくエネルギーが湧いてきて、この失敗をどう乗り越えたらいいか、今やるべきことは何か、どうしたら問題が解決するのか、というふうに思考が変わったのです。

あの時、一人で悩み続けていたら、そこから何かを学ぶ気持ちの余裕もなく、もっと長く苦しんでいたかもしれないと今でも思います。

人に失敗はつきもの。
そのことは頭ではわかっています。
でも、生身の人間にとって失敗は観念ではなく「自分ただ一人に突きつけられた現実」だから、つらいのです。
そして、それをもっとつらくしたのは、誰にも相談できずにただ一人で抱え込んで悩んでいる、孤立した状態でした。


●相談できる信頼関係が、バラバラ状態を「つなぐ」


会社や職場が家族的な人のつながりを持っていた昔と違って、今の組織の中には、結果として人を分断してしまう要素がたくさん潜んでいます。

SNSやメールでのやりとり、処理しきれない量の情報、人の入れ替わり、細分化された仕事、結果や能力主体の評価、人の育成よりも仕事の処理にウエイトの置かれた効率を追求するマネジメント…など。

個人は好んでバラバラになっているわけではないし、組織もそれを望んではいない。「コミュニケーションが大事だ」「連携が必要だ」とは誰もが言います。
しかし、すでに個人の意思だけでは組織としてのつながりがつくれない、という現実があります。

だからこそ組織的に、業務の目的とは別の機会、お互いが気を許して事実に向き合ったり、困っていることを相談したりできる時間を取ることが日常的に必要になっているのです。

本当の意味での効率的な仕事とは、悩みや仕事を一人で抱え込んでしまう現実を変えること、このような目に見えないムダをなくすことなのだと思っています。


人から失敗や悩みがなくなることはないのかもしれませんが、一人で悶々と悩む“孤立状態”を解消することは、意図すれば簡単にできます。

たとえば、職場のメンバーで行なうオフサイトミーティング(=気楽にまじめな話をする場)は、最初は弱音の宝庫です。
失敗した、落ち込んでいる、わかっていてもどうしようもない……そんな仕事の中で一人ひとりが抱えてきた気持ちが吐き出されても、誰かが弱みを握ったり諭したりすることはありません。

相手が受け止めてくれるという安心感の持てる環境がつくられている場だから、なかなか言えなかった違和感やモヤモヤも思いきって口に出すことができます。
それを聞き合い、分かち合える仲間がいるとわかれば、個人は孤立状態から脱していけるのです。

会社の中に深く話し合える仲間がいる。
その気持ちのつながりを実感できる信頼関係によって、バラバラの「人」と「人の中にある仕事」もつながっていきます。
そのようなつながりを形成する話し合いのベースをつくるだけでも、組織はずっと生産的になるのです。


(本コラムは著書から転載・更新したものです)

源明 典子

源明 典子(げんめいのりこ)

いい会社、いい組織づくりには、社員が自ら組織で知恵を出して実践する環境が不可欠と考え「ありたい姿」「自発性を引き出す」「チームの協働」「マネジメントの変革」の視点をもって支援に携わる。とくに、製造業の研究・開発部門、生産技術部門やサービス部門における「チームイノベーション」支援経験を豊富に持つ。

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