地方自治体にもそのようなニーズが多々あるのかも知れません。しかし、自治体の場合、内閣に相当するような横串を通す部署が行政組織内にあるわけではないため、形式的に進めれば、仕組みを分断して運営しがちな状況にあると言えます。自治体では首長と職員が国よりずっと近い距離にありますので、実質的に運用していけば、問題をすぐに解消できる可能性もあるでしょうから、仕組みをいかに形骸化させないようにするか、それは自治体の経営力にかかっています。

そこで、NPO法人自治体改善マネジメント研究会では、今年度から行政組織内で各種経営の仕組み(計画・方針・制度など)を担っている管理部門の職員が集まり、現在の運営状況をふり返りながら、今後のより効率的・効果的な経営改善策を、部署の縦割りを超えたチームとして考えていく「チーム経営研究会」を始めることにしました。
予定では、5月から対面でお集まりいただく場を6ケ月設ける予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けて3ケ月遅れでスタートし、すべてWEB開催に変更して実施することになりました。
そのため、今ようやく折り返し地点を過ぎ、今後の方向性が見えて来たところです。ここでは、今年度取り組んでいる二つの自治体の活動から特徴的なポイントを二つ、中間報告としてご紹介させていただきます。

管理部門の縦割りを超えた係長たちのつながりから見えて来るもの

管理部門には、企画、財政、行政改革、人事などに関する部署があり、それぞれが全庁に関わる重要な方針や計画、制度を運営しています。これらの部署に「どんな仕組みがありますか?」と問えば、どの自治体にも総合計画や総合戦略、予算編成方針や決算報告、行財政改革プランに組織運営方針、組織目標、施策評価、事務事業評価、人材育成基本方針、人事評価制度、改善取組など、数多くの仕組みが並べられることでしょう。
しかし、管理部門の中でも所管する課や係が異なるため、「お互いの帳票やマニュアル、目的や使い方について共有し、運営方法を話し合っていますか?」と問い直してみたら、どうでしょうか。自信をもって「ハイ、やっています」と応えられる自治体はあまりないように思われます。

そこで、じっくり中身を見合い、共有していくと、一見つながっているハズの仕組みと仕組みの間に意外な漏れやズレがあることがわかってきます。日々いろんな会議で席を同じくし、各種の打ち合わせもしてきている間柄の係長たちにとって、「一体今まで何を話していたのだろうか」と、ショックを覚えるほどの盲点に気づくことがあるものです。個々の仕組みの中だけ見ていたのでは見えない「行政経営システム」の全体像は、まさに木を見て森を見ずと言われる森の存在です。

地域のめざす姿とその実現に向けた仕組みとのつながり

ただし、不具合を起こしている状態に気づいただけで、すぐに改善・改革に着手できるわけではありません。不具合がいつから、なぜ生じているのかの要因を探り、真の問題を解決する必要があるからです。
それには、解決した先に何があるのか、仕組みをつないで相互のつながりをよくすることが、自分たちにとってどんな意味があるのかについて、しっかり腑に落ちていることが大切です。

そこで大事なのが、総合計画の基本構想に書かれた地域のめざす姿です。

今は、法律の義務付けもなくなりましたので、策定するかしないかは、自治体の裁量によりますが、ほとんどの自治体で策定しています。ただ、地域のめざす姿(将来像)は、すべての政策を包含して方向づけるものとなっているため、抽象度が高く、捉えどころがわかりづらい表現になっていることがよくあります。
特に、全国一律の法律事務に携わっている事業課の職員にとっては、その意味を深く理解しなくても、仕事をこなすことができるため、そこに何が書かれているのかについては、特に気にもとめないで日々過ごせてしまう現状があるのではないでしょうか。

そのため、管理部門で各種の仕組みに携わっている係長クラスの職員には、これら地域のめざす姿にどんな意味が込められているのかについて自ら十分理解するとともに、各事業課の担当職員に対しては実務の中に落とし込めるように咀嚼して、通訳、翻訳するサポートをしていくことが大切です。さらには、各部署の管理職が、施策を方向づけたり、事業を優先づける戦略づくり、または、行政評価した結果、どんな改善につなげていけばいいのかを見定めるときに補助する役割も担なっています。
特に、首長が交代した後や総合計画を改定したときには、これら支援の役割がより重要となります。地域のめざす姿が変われば、その方向性や目的からすべての事業を見直す必要が出て来るからです。今回参加された二つの自治体では、一つが新しい首長になって1期目で、総合計画ができたところ、もう一つが首長の3期目で、現首長になって二回目の総合計画がスタートしたところでした。どちらも、新しい基本構想のもとで仕組みがうまく機能できるのかを見直すことに変わりがありません。

ただし、どちらかと言うと、前者のほうが見直すきっかけはつくりやすく、後者のほうが見過ごされやすいという傾向はあるのかもしれません。

今後は、参加者のみなさんが、この研究活動で得られた気づきと自分たちの役割認識をもとに、いかに実行に変え、庁内の他の階層や部署に働きかけていくのかについて、実践、展開策を検討し、とりまとめていくことになります。
みなさんの自治体でも、扇の要となる管理部門内からチーム力を再構築する必要性を感じられた方は、ぜひ次年度の「チーム経営研究会」へのご応募をご検討いただければと思います。