定時内で業務に関するオフサイトミーティングの活用

公務員の間で「オフサイトミーティング」という言葉を知っている方の多くは、定時後に業務外で自由に意見交換する場だと思われているのではないでしょうか。もちろんそのような目的で活用いただいてもよいのですが、私たちスコラ・コンサルトでは、組織の中でよりよい仕事をしていくための変革プロセスの一つ、定時内に業務に関して気楽にまじめな話をする場として活用しています。

昨年7月から9月には、弊社対話普及チームが「オフサイトミーティング 仕事の価値を高める会議」を出版したのを機に、月1回ずつ単発で、公務員を対象としてオフサイトミーティングについての考え方や活用方法をご紹介する「公務員のオフサイトミーティング場づくり応援セミナー」を実施しました。

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「会議の補助輪」としてオフサイトミーティングを活用する」

ここでは、その後希望者を対象として10月から1月まで月1回4ケ月間連続して実施した「公務員のオフサイトミーティング場づくり応援セミナー」の中で踏み出したはじめの一歩のポイントをお伝えいたします。

スタートは、問題意識を持つところから

オフサイトミーティングをしたいと思う人には、いくつかの共通点があります。その大事な一つに、前向きな問題意識を持っていることがあります。

「最近職員に元気がないよなぁ~」「いつもと違う課題にどうもみんなが対応しきれず、アップアップしているようだ」「果たして今のままのやり方で進めてしまっていいのだろうか」など。現状に違和感を抱いたとき、それに関して見て見ぬふりをしてやり過ごすのではなく、「自分に何かできることはないだろうか」と当事者意識を持ってとらえているからこそ、問題意識が自分の中に湧いて来るのではないでしょうか。この“もやもやした思い”を抱えていることは、不安定でつらいものです。しかし、それがマグマとなって、何とかしようというエネルギーが高まり、動き出す力につながってきます。

何のため、何をめざして場をつくるのか

それでも、「何かおかしい」というもやもやした思いを抱えているだけでは、場をつくる行動を起こすまでには至りにくいものです。
なぜかというと、問題意識だけでは、なぜその問題を解決しなければいけないのか、解決した先に何を得たいと思っているのか、場づくりの目的がまだ見出せていないからです。

目的意識は、内発的動機を生み出す大事な支柱となるものです。ただ、行政組織においては、これをうまく設定することが意外と難しい。それは、仕事の多くが自分たちで目的を設定し、自己決定して創り出したものではなく、国が設定した法律に基づいて成り立っているからだと考えられます。
もちろん法律の前文には高邁な目的が設定されています。しかし、その壮大さゆえに、今目の前に生じている問題が、その中のどこに位置づけられ、どの範囲の、どんな関係者を巻き込んで起こっており、解決にあたり責任を持てる人は誰なのかということを、切り取って見定めにくいところがあるのかもしれません。具体的に問題を掘り下げてみないとわからないことがあるようです。

そこで、オフサイトミーティングの場づくりにあたっては、最初の仮説として、問題に取り組む目的、解決した先にめざす姿、関わる当事者の範囲、最終的な意思決定に影響を及ぼす上司など、取組の全体像をとらえておくようにします。そして、1回の場で、最もうまく進んだ場合の到達レベル(松)、そこそこうまくいった場合の到達レベル(竹)、最低限ここまでは行っておきたいという到達レベル(梅)を回ごとに「場づくりチェックシート」に書き表して作戦を立てていきました。

会議の補助輪としての場の活用

また、「本音を話しましょう」と、気楽にまじめな話をするだけでは、問題の解決につなげることは困難なものです。というのも、通常の業務の枠からこぼれ出る問題は、自分の立場や責任の範囲、もしくは、現在予定されている業務や目標にない話題がでてくる可能性が高くあるためです。

そこで、まずは、通常行なわれている会議を起点としつつ、そこからこぼれ出たネタを話しやすい場を“会議の補助輪”としてつくることをおすすめしました。
それでも、あえて“会議”を起点としたのにはわけがあります。それは、会議にはそれぞれ責任者が明確になっていますので、その方をスポンサーとして開催の了解をとっておけば、もし話のネタが他の部署の業務に関することに飛び火したとしても、越境した課題について話し合いを進めるときのつなぎ役になってくれる可能性があるからです。そのひと手間をかけておくことが、参加者にとって安心して話ができるセイフティネットを用意することになります。

オフサイトミーティングの場をつくる世話人には、そのような目的レベルが変わったときに、呼びかける対象者を替えながら、より当事者に身近なところで問題をとらえ直し、解決の糸口をつくっていく。そんな先行きにも視野を広げて場の乗り換えやスポンサーへの働きかけを準備しておくことが大切です。

定時内に業務に関してオフサイトミーティングの場を開催する理由には、飲み会のようにその場で出た本音を、その場限りで終わらせないというねらいがあります。単発の場、固定した場ではなく、めざす姿に向けて必要に応じて場の目的を見直すなど、試行錯誤しながら場と場をつなぐプロセスをデザインしていくことが、真の問題解決には必要となります。そのため「場づくり実践セミナー」では、「場づくりチェックシート」を活用して、場をつなげ、積み重ねて変革のプロセスを築いていく実践にチャレンジができるよう、4ケ月間、月1回のセミナーを継続しました。セミナーに参加された方からいただいた事後のアンケートでは、さらなる継続や新しい参加者を紹介したいとのご意見をいただくなどご好評を得ましたので、昨年参加しそびれた方のため、3月下旬に「公務員のオフサイトミーティング場づくり応援セミナー」もご用意しました。そして、応援セミナーを受けられた方の中から希望者を対象に4月以降「オフサイトミーティグ場づくり実践セミナー」をご用意する予定にしています。ぜひ、新年度のご自身と職場のチャレンジにお役立ていただければと存じます。