〈エンゲージメントサーベイで組織は変わるのか?〉<br>導入企業が見落としてきた「アフターサーベイ」のプロセス(後編)<br>変化の原則と試行錯誤の進め方で「小さく」スタートする|コラム|スコラ・コンサルト
〈エンゲージメントサーベイで組織は変わるのか?〉<br>導入企業が見落としてきた「アフターサーベイ」のプロセス(後編)<br>変化の原則と試行錯誤の進め方で「小さく」スタートする

〈エンゲージメントサーベイで組織は変わるのか?〉
導入企業が見落としてきた「アフターサーベイ」のプロセス(後編)
変化の原則と試行錯誤の進め方で「小さく」スタートする

滝口 健史 | 2021.07.05

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〈エンゲージメントサーベイで組織は変わるのか?〉<br>導入企業が見落としてきた「アフターサーベイ」のプロセス(後編)<br>変化の原則と試行錯誤の進め方で「小さく」スタートする

[前編] 組織変革の側から見たサーベイ活用の「落とし穴」はこちら

前編では、組織が変わるためにはエンゲージメントサーベイの限定的な活用に落とし穴があるという現状を、人事部門の特性とサーベイの相性という観点から探りました。
後編では、サーベイをどう活用すべきかの観点で、調査結果をもとにして変化を生み出す活動を展開する「アフターサーベイ」のプロセスを見ていきます。


サーベイで変化を起こすには何が必要か

サーベイをきっかけに社員同士がつながり、解決に向かって協働が進むようなダイナミックな変化を起こすには、次の3つの要素が必要だと私は考えています。

 1.「サーベイだけで終わらせない」動機
企業からの相談を受けていると、「他社もやっているから」「他社と比べて、とりあえず平均点以上に」くらいの動機でサーベイを導入し、会社を良くする変革の意志があまり感じられないケースがあります。
しかし、最初に思いをもって自発的に動く“原動力となる人”がいることで、その動きが広がり、組織に変化が生まれます。サーベイ導入時点で変革の意志を強くもつのは難しいことかもしれませんが、少なくとも「この問題に困っている」「こういう会社にしたい」という初期動機や、「サーベイを終点でなく起点にする」意志は必要です。

 2.問題の対象範囲とタイプの見立て
サーベイが使われる場面を見ていると、担当者が「要は何を解決すれば結果につながるのか」を端的に知りたがっているケースがあります。「原因と結果は直線的に結びつけられる」と考えているように見えるのです。
しかし、組織の問題には、①目に見えるために手を打ちやすいタイプの問題と、②目に見えず複雑に絡み合っているために単純なロジックでは解決しにくいタイプの問題、があります。特に多くの場合、手つかずになりやすいのが②の問題です。

図の上段のように、企業は戦略や仕組みにもとづき、製品・サービスの形で顧客に価値を提供します。これらは目に見えて扱いやすいため、不具合があればロジカルに判断して変化もさせやすいものです。
一方、見えにくい領域としては、戦略や制度の中核になるコンセプトが生まれたり、戦略や制度の意図を社員が理解して実行する「プロセス」が根底にあります。有機的に人がつながって発揮される組織能力や、暗黙の規範として共有された組織文化などが働くこのプロセスは、どんなアクションをとれば向上するのかロジックはあやふやです。指示すれば認識や行動が変わるわけでもありません。
「組織に変化を起こす」活動をするときは、見えやすく手を打ちやすいレイヤーだけでなく、そこに影響を与えている組織の能力や文化のレイヤーまで深く掘り下げて組織の状態を捉え、それらを一体で変化させていくことが必要になります。

3.「変化の起こし方の原則」を踏まえた試行錯誤
企業によってはサーベイ後のアクションが、方針や制度を変更したり、関連する研修を実施するくらいで終わっているケースがあります。変更の意図や背景をすんなり理解して行動を変えられる社員が多ければ、それは効果的なアプローチかもしれません。
しかし、大抵の場合は、めざす状態や目的がなかなか社員に伝わらず、全体の変化につながらなくて困っているのではないでしょうか。組織全体に変化を起こしていくには、以下のような原則を心得ておくことがポイントです。

***
【変化の起こし方の原則】
◆双方向のやりとりで主体性を喚起
人や組織を動かすためには、エビデンスやロジックで伝えるだけでなく、対話など双方向のやりとりを通じて、各自にとって組織が変化することの意味は何かを考えられるようにします。納得感が醸成されることで主体性が喚起されるからです。

 ◆実際の課題を扱うなかで組織能力・文化が変わる
組織能力や組織文化のレイヤーで根本的な変化をめざす場合でも、事業戦略と関連づけて組織課題を設定します。チームで協力して課題解決に取り組むなかで組織としての能力が磨かれ、文化は変わっていきます。知識を付与する「研修のための研修」ではなく、現実の課題を扱うほうが効果的なのです。

◆エネルギーの高いところから着手し、動きを連鎖させる
変わろうとするエネルギーの高い人や部門で動きを起こし、先に成果を出してから全体に広げていきます。最初は小さくスタートし、その動きに影響されて追随する人や部署が出てくればよいのです。変化の動きは一律一斉に起こるものではなく、まだらに発展していくものです。その動きをつないで連携を強化しながら範囲を広げていきます。 

***

たとえ変化の原則を踏まえても、組織は生ものなので計画どおりに進むとは限りません。刻一刻と変わる状況に応じて、そのつどふり返り、構想を修正しながら進めていくのが試行錯誤型の取り組みです。
組織に変化を起こすためには、「どういう組織をめざし、何を変えていくのか」、「変わっていくためにはどこに着手し、動かしていくのか」という変化の動きの全体構想が必要です。そこに起爆剤としてサーベイを位置づけることができれば、サーベイは有効に機能し、そのあとの活動も発展するのです。


「アフターサーベイ・プロセス」を小さく始める

これまで述べてきたように、サーベイを起点にして組織に根本的な変化を生み出す活動をスタートするには、周到な準備が必要です。長い道のりになりますが、根本からの変化は、まず“職場の主体者づくり”から小さく始めるのがポイントです。
ある会社では、毎年実施しているサーベイが職場担当者への結果共有にとどまり、事務局の指示を受けないと動きが起こらない状況がありました。職場が課題解決に向かって自発的に動き、部門をまたいで協力し合う組織になってほしいと期待する事務局は、各職場で課題解決の推進役となる社員に集まってもらい、私たちと以下のような内容のプログラムを実施しました。

◆「職場の現状」を、参加者の主観・実感をベースに話し合う

◆事業と組織の「ありたい姿」を発散的に話し合う

◆自分の主観だけでは足りないと感じたタイミングで、実施済みのサーベイ結果を用いて自職場の傾向を客観的に把握する

◆最後に、事業と組織を結びつけた「ありたい姿」を仮決めし、実現のための活動シナリオを作成する  

 このプログラムでは、職場で動きをつくるコアメンバー候補が参加し、サーベイ結果を分析するためだけでなく、事業に大きな影響を与えている組織課題について考え、対話をします。対話の時間を長くとることで、担当者が会社の問題を自分に引き寄せて考え、主体的に行動することや、職場のメンバーと対話を通じてサーベイ結果を共有するイメージをつかむことを意図しています。
このあと担当者は、自職場に戻ってサーベイフィードバックを行ない、メンバーを巻き込んで職場の課題に取り組みました。事務局とは状況を共有し、必要に応じて協力を求めながら課題解決の活動を展開しています。
この場合も、職場によって活動の進み方やスピードは違うため、全体を一律に引き上げようとするよりも、エネルギーの高い職場をしっかり後押しすることがポイントです。

付記「アフターサーベイの動きにつながる既存サーベイ運用の見直し」はこちら

「アフターサーベイプログラム」はこちら



著者プロフィール

滝口 健史

滝口 健史

TAKESHI TAKIGUCHI

クライアント組織での従業員サーベイを活用した実態把握のほか、ワークショップ開発や社内の情報システムも担当。 事実情報や議論を積み上げることで新たな洞察が導かれるプロセスを日々探求している。

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