そうした活動の一つとして、「何のために働くのか」を立場や年齢を超えて気楽に真剣に語り合う「ハタモク」という場をスコラ・コンサルトのメンバーが立ち上げました。ハタモクでは、就活前の大学生、高校生、中学生たちと社会人が向き合って、一緒に、そして自らも真剣に考え、議論しています。その趣旨に共感して参加する社会人の人たちもどんどん増えています。

対話を通して考え、「何のために働くのか」ということを自分なりに見つけていく

若者の雇用問題は深刻化し、昨年度末には文科省、厚労省が緊急対策を打ち出しました。大学にハローワークのジョブサポーターを派遣することや、中堅・中小企業を中心とした就職面接会の開催、ジョブカフェでの未内定者等向けカウンセリングなど、大学と連携した支援体制を強化してきました。また、2011年度からは大学の教育課程に職業指導(キャリアガイダンス)を盛り込むことが義務化されました。

その一方で、昨年の20代若者の死亡原因のトップが「就活自殺」であったというショッキングな報道がありました(2012年5月8日 読売新聞)。企業に就職できないことが生きる道を閉ざしてしまうとは、悲しいことです。

このような状況を見ると、キャリア教育=就職対策(高校までは、受験対策と就職指導)ではなく、自分がどうありたいかを学生たちが多様な人たちとの対話を通して考え、「何のために働くのか」ということを自分なりに見つけていくステップが必要です。

私が教べんをとっている日本橋学館大学で、今年度から正規科目の「キャリアデザイン基礎」の何コマかに「ハタモク」のワークショップを導入しました。6月と7月の2回、土曜日の午前中に学生70名、社会人35名が参加して、3時間ほど3、4人の小グループで対話を行ないました。

学生たちはほとんどが1年次生で、将来に対する不安や自信のなさを感じていましたが、大人の社会人たちとじっくり向き合って話すこと、自分の辛かった経験や楽しかった思い出を語ることを通して前向きな気持ちになっていきます。「いろんな考え方、生き方があっていいんだ」と気づき、安心します。将来に展望が持てるようになれば、これからの大学生活を積極的に過ごして充実させたいと感じるようになります。

「第三の大人」とのワークショップ

多くの学生たちは、社会人と話ができて勉強になった、楽しかった、元気が出た、という感想を持っていました。おとなしい、あまり自己表現が得意でない今の学生たちに、人と関わり合うことへの小さな希望のスイッチが入った瞬間です。それは、2回目も楽しみにして参加した学生が多かったということからもわかります。

講義形式の授業が多い中、教師でも親でもない「第三の大人」が真剣に自分たちの話に耳を傾けてくれる、カウンセリングとは違って他の人たちの考えも聞ける、このようなワークショップでの対話の経験が若者たちの気持ちを社会に向け、将来に向けて開かせてくれるものと確信し、これからも積極的に進めていきたいと考えています。