そんな組織の弱点を克服して、組織としての一体感を持ち、効率的・効果的に組織の経営力を高めていけるよう、NPO法人自治体改善マネジメント研究会では、2020年度から「チーム経営研究会」という取組を始めました。
これは、自治体ごとに開催し、組織の要となっている管理部門・管理職の有志数名が部署を越えて集まり、月1~2回、計10~12回、半年かけてじっくりと対話しながら、自組織の経営課題や経緯のふり返りから、将来のめざす姿や問題の本質、今後取り組みたい課題について、一つのチームとして検討し合う場です。
自治体ごとに、それぞれのニーズに応じて開催しているため、集まるメンバーの部署や階層、人数は自治体によって異なります。また、首長の経歴や経営課題、めざす姿も異なります。しかし、そこから自治体によらず、どの行政組織においても「チーム経営」を実現するうえで、共通する弱点がいくつか見えてきました。
INDEX
(1)将来像は知っているが、自分を主語に語れない
自治体では総合計画基本構想に、長期にめざす姿として“将来像”を示しています。
これはあらゆる政策分野を持つ行政組織において、政策を超えて共通する方向性を示すものです。
もちろん、それがどこに書かれているのかについては、ほぼすべての職員が知っています。しかし、これをそらんじて言える人はグッと減ってしまいます。さらに、それが自分の仕事とどうつながっているのかを語れる人は、めったにいません。
(2)組織目標は掲げているが、組織のめざす姿は示せていない
次に、もう少し身近な組織、課をとらえてみると、各課では課長が年度ごとに“組織目標”を示しています。
これは、職場で課員全員がめざす共通の目標として充分でしょうか。
どの自治体でも今は人事評価制度が整備されていますので、個人目標の前提として課長が組織目標を設定しています。しかし、何を組織目標とするかは自治体によって異なります。例えば、組織目標に、業績目標しか設定していないところと、働き方改革や人材育成など業務を実現するために必要となるプロセスの目標についても併せて設定しているところがあり、様式・書き方にはかなり違いがあります。
また、そのどちらの場合でも、課題別の目標は明示されている一方で、それによってどんな組織になろうとしているのかという、チームとしてめざす姿を記しているケースはほとんどありません。
(3)業務の目標は設定していても、果たす能力を育成する余裕がない
どの自治体も今のコロナ禍では通常業務に非常時の対応が重なって、誰もが目の前の課題に追われる状況にあるでしょう。個人目標に設定した業務課題や目標は頭でわかっていたとしても、新しい課題に対処するに際しては、それに応じた能力を身に付けていく必要があります。その能力を育成する余裕がなくなっていると、思う通りに進まずにいて、メンタル面でも辛くなり、今度は心身に不調を引き起こす危険性が出てきます。
それは上司も同様で、面談する時間を確保できなくなると、部下の状況を把握して成長を支援したり、育成するための職場環境を用意することもできなくなるのではないでしょうか。だとすれば、能力が足りない→時間が足りない→人が育たない、という悪循環を招いて、結局「人が足りない」と定数増を要求し続けるだけのマネジメントに陥ってしまいます。
そこで、このような組織の弱点をカバーするために、研究会での検討を通じて見えて来たことがあります。
◎「チーム」になるために不可欠な“つながり”
「チーム」は、メンバーが居さえすればできるわけではありません。自分からは見えない将来像に光をあてて共にめざす思いを共有し、そこにつながる道の先に道標(目標)を明示して向かう意欲を高め、自分だけでは足りない力を助け合える仲間との関係をつくっていく、“つなぐ”マネジメントと“つながる”関わりの両面が合わさって、次第に築かれて来るものです。
自治体にとっての“住民の福祉の増進”という壮大な目的も、将来像、組織目標、個人目標の形式があれば達成されるのではなく、互いに関わることから、チームづくりは始まります。特に、環境の変化が激しい今の時代には、その関わりは、会議や文書などデータのみでは生み出されず、臨機応変に、必要な人と人が直に対話することを通じて、新しいチームのあり方を見出していくことが大切になっています。新しい環境の変化に対応した経営課題も共に発見するプロセスから、それを解決する当事者意識が芽生えてきます。
「チーム」の姿は、動きながら見えて来るものなのだと思えます。
昨年度の「チーム経営研究会」の事例報告は、9月3日(土)午後、「自治体改善ステップアップセミナー」として開催されます。
よろしければ、ぜひどんな「チーム」のあり方が見えてきたのか、覗きに行ってみて下さい。
▼「自治体改善ステップアップセミナー」のお申し込みはこちらから
