地方創生にマーケティングが求められる理由|コラム|スコラ・コンサルト
地方創生にマーケティングが求められる理由

地方創生にマーケティングが求められる理由

元吉 由紀子 | 2021.08.03

  • Facebook
  • Twitter
地方創生にマーケティングが求められる理由

少子高齢化、人口減少が進み消滅可能性自治体となる危機感から、多くの自治体で地方創生に向けた施策が熱心に進められるようになりました。その結果、地域おこし協力隊を導入したり、大学や企業などと連携して地域イノベーションを起こしたり、ふるさと納税をアピールするなど、まずはできることから何でもやり始めているのが実態と言えそうです。

しかし、あれもこれも手をつけていたのでは、経営資源がいくらあっても足りません。費用対効果はどうか、測る指標は適切か、成果をしっかり検証して質を見分けていくことが必要になっています。
それには、自治体の総合的な計画、政策体系の中に位置づけている重要施策などについてマーケティング戦略を備えておくことが大切です。

自治体がマーケティングする目的は、顧客は住民、提供する製品・サービスは政策で、住民のニーズに応じた政策を提供することで、安心して住み続けることのできるまちにすることにあると言えます。しかし、今ではこのあたり前のことができにくくなっていることから、移住・定住促進、関係人口増など地方創生に取り組む際には、改めてマーケティング視点でとらえ直す必要があるでしょう。

●まちの将来像は、誰を対象に描くのか

総合計画でまちの将来像を描くとき、みなさんは、誰のニーズをもとに将来像を立てているでしょうか。総合計画策定審議会のメンバーを見ると、住民で構成されているのが一般的です。すなわち、今このまちに住んでいる人が、将来どんなまちになることを望んでいるのかを描く内を向いた書き方になっているわけです。その結果、多くのまちの将来像(めざす姿)を並べてみると、「住み続けられるまち○○」「子供がいきいき育つまち△△」など、まちの名前を除けば、そのほとんどがどのまちかわからない、似た内容になっています。

これは、その自治体に生まれ、育った人が、自然とそのまちに残るか、一旦出たとしても長男などが戻って来て、まちで働き、暮らし続ける、血縁や地縁が続いていたときには十分な書き方でした。また、都市と地方の格差ができ始め、宅地の造成、企業の誘致、地場産業の活性化策などを計画するときも、今住んでいる住民に対して現在の延長線上に付加した形で「安心して暮らせるまち□□」「にぎわいのあるまち◇◇」などの将来像を示せたところがあったでしょう。

しかし、住民の転出を防ぐとか、出生率を高めて定住策を打つだけではもはや歯止めがかけられない状況が出て来ています。外からの移住や交流による関係人口の増加、流入、転入を起こす策が期待されるようになった昨今では、将来像を描く際、今住んでいる人だけではなく、今はまだこのまちにいないけれど将来住む可能性のある人もしくは将来関係者となる人に対して、その潜在的なニーズに訴える魅力を書き表しておく必要があるのだと思います。

●自分たちのまちの特色、魅力は何か

将来のまちの姿を、将来住民となる人のためにもわかりやすく描くとしたら、どんな姿になるでしょうか。そこには、他のまちに比べて自分たちのまちにどんな魅力があるのかをしっかり把握してアピールする必要が出てきます。それにはまず、自分たちのまちとその他のまちがどう違うのか、違いを知り、特色づけておくところがスタートになります。

しかし、自分たちのまちにどんな魅力があるのかを認識することは、意外と難しいものです。なぜなら、人口減少してもなおまちに残っている住民の多くは、そのまちから出たことがなかったり、このまちで特に不自由を感じることがなく、他と比較する必要がなく暮らしている人たちがほとんどだからです。

自他の認識は、他者に接してみて初めて感じることができるものです。接する機会の少ない人には、魅力があったとしてもそのことを自覚しにくいところがあります。むしろ、外から新しくまちに来た人のほうが感じ取りやすいものです。地域おこし協力隊や大学からオープンイノベーションなどの研究やワークショップに来る人に聞いてみたほうが、明確に答えてくれる可能性があります。

●選ぶときに比較される自治体はどこか

この自治体ならではの魅力をもとに、今度はそれを求める人が今どこにいるのか、ターゲットとなる人物像を意識して、対象エリアを想定してみましょう。それが、移住や交流を呼びかける先になってきます。また、新たに転居や訪問する先を探している人が、候補にあげるとしたらどんな自治体を検索するでしょうか。
自分たちのまちと比較されるのは一体どこか、この競合をとらえる視点を持つことは、エリア内を独占している自治体職員にとって、もっとも苦手なことのようです。多くの場合、職員は通常の仕事の中で自分の自治体と他の市町村を比べるとしたら、類似人口規模の自治体や、周辺市町村といった限られた対象しか見ていないからです。

例えば、今のコロナ禍でテレワークが広がっています。それにより大都市圏から地方に移住を希望する者が増えています。しかし、ここに様々な自治体が一度にDX人材を求めて「テレワークの仕事環境を用意します!」と打ち出しただけでは、まったく差別化にはならないでしょう。同じテレワーク先として、他にどんな候補先自治体があるのかを知り、移住者から選ばれるOnly1の明確な特徴やNo1の優位性を持っておくことが重要です。

地方創生に向けて移住や関係人口を増やす策を進めている自治体は、自分たちの魅力を、どんな人に、どの自治体と比較しつつ伝えるのかマーケティングの視点からもぜひ考えてみて下さい。

著者プロフィール

元吉 由紀子

元吉 由紀子

YUKIKO MOTOYOSHI

生活者起点で時代最適の価値を創造し続ける経営を実現できるよう、トップと現場の有志たちが連携・共振していくプロセスを一緒に築きあげている。

関連コラム

RANKING

CATEGORY

PROCESS DESIGNER

ARCHIVE

組織の風土改革のご相談、
各種お申込みはこちら
CONTACT US

page top