〈オフサイトミーティングのタネ明かし〉その① 心理的安全性を高めるために「心理的危険」を減らす|コラム|スコラ・コンサルト
〈オフサイトミーティングのタネ明かし〉その① 心理的安全性を高めるために「心理的危険」を減らす

〈オフサイトミーティングのタネ明かし〉その① 心理的安全性を高めるために「心理的危険」を減らす

高木 穣 | 2021.08.26

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〈オフサイトミーティングのタネ明かし〉その① 心理的安全性を高めるために「心理的危険」を減らす

「心理的安全性」、企業の組織開発の世界で最近よく語られる用語です。簡単に言い換えると「何を言っても大丈夫という安心感」のことです。私たちが行なっているオフサイトミーティングのセミナーでも、「心理的安全性の高い場づくり」に関心を持つ方々の参加が少なくありません。

今回は、オフサイトミーティングの中で、プロセスデザイナーがどうやって心理的安全性の高い場づくりをコーディネートしているのか、部分ではありますが、そのタネ明かしをしてみようと思います。


「心理的危険を減らす」場づくりの3ステップ

オフサイトミーティングでは、心理的安全性を高めているというより、「心理的な危険を徐々に減らしていっている」といったほうが妥当です。
具体的にいうと、「言ったら痛い目に遭う」という恐怖心を、場の中で体験的に減らしていっているのです。恐怖心にはいろんな形があり、その恐怖心が薄れていく体験を積み重ねることによって、心理的安全性が高まっていきます。

それを実現するために、オフサイトミーティングでは、次のような3つのステップを絶妙に場づくりの中に取り入れています。


コーディネーターは、特に場づくりの初期にこれを積極的に行なっています。

第1ステップ:「許可」
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最初のステップの「許可」とは、厳密にいうと「許可メッセージを場の参加者に伝える」こと。通常だと「言ってはいけない」と感じて引っ込めている意見を、「この場では言ってもいいですよ」と許可することです。

オフサイトミーティングでは、始める時に必ず「オフサイトミーティングのルール」を説明します。これが「許可メッセージ」にあたります。
「この場では、いったん立場や役割を離れて、自分の言葉で語りましょう」「知らないこと、わからないことは素直に問い返してください」「特に地位の高い人は、あえて弱みを見せてみましょう」などと伝えます。



会議では、立場を離れた発言は批判されます。「知らない、わからない」という発言は、優秀さを求める組織においては評価が悪くなります。
「弱みを見せる」ことは企業戦士として恥ずべきことだ、周りからなめられてしまう、という見方がはびこっている組織もあります。
こういった常識がある中で、本当は思っていること、間違っているかもしれないけれど大事だと思うことがあるのに、発言することを押さえつけている暗黙の規範がある。それを「破っていいよ」と許可を与えるのが第1ステップになります。

オフサイトミーティングでは参加者の主体性を大事にしているので、「本音を言わせる」のではなく、「言ってもいい」という許可だけ与えて、その結果、言うか言わないかは本人たちの判断に委ねます。そこには、「選択」の権利を参加者に与えることが主体性にとって重要なことだ、という思想があります。

第2ステップ:「誘導」
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「選択」の権利を与えるだけでは、まだ動けないケースが多いのが現実です。そこで大事になってくるのが「誘導」という2つ目のステップです。

いくら「言ってもいいですよ」という許可メッセージを発信しても、それを信じて本音を言ってもいいのかと疑心暗鬼に襲われるのが普通です。「今日は無礼講だ」と言われ、本当に無礼なふるまいをしていいのか、躊躇してしまうのと同じ心理です。
人はどんなに言葉を尽くされても、それを現実に目撃したり、実感しないと信じられないものです。「怖くてこんなこと口に出せない」と自分を縛る恐れの気持ち、呪縛からはなかなか解放されません。許可メッセージにしたがった発言をしても「痛い目を見なかった」体験を場の中で実際にしてみて、はじめて本当にそうしていいんだと信じる気になってくるのです。

そういう体験をするため、場の中で“最初の発言”が生まれやすくなるように「誘導する」のです。誘導というと、何か人をコントロールしているような嫌な印象があるかもしれませんが、どちらかというと「言いたい」あるいは「言ってもいいかな」と思っていることの後押しをしているのです。
具体的には、「本当はどう思っているのですか」とか「モヤモヤしていることを話してみてください」というような問いかけによって、発言を促しています。


第3ステップ:「承認」
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口には出してみたものの、周りが無反応のままだと不安になって、言わなければよかったと後悔します。そこで第3ステップの「承認」です。
通常の会議では出ない発言、出しにくい発言がその場に出てきた時に、「発言者を痛い目に合わせないこと」がこのステップの完了行為になります。

「この発言をすると痛い目に遭うだろう」という組織の規範に反する発言をしたのに「痛い目に遭わなかった」体験をすれば、一つ「心理的な恐怖心を生み出している規範」が減ったことになりす。これは発言した本人だけではなく、それを目撃した参加者にも同様の効果が生まれます。
それだけの意味をもつ発言ですから、「言ったら痛い目に遭うかもしれない発言」をしてくれた人に対しては、よくぞ言ってくれた、という気持ちで「承認」するのです。

承認とは、具体的には「いい意見ですね」「なるほどそういう思いがあったりするんですね」というような受け止める発言をコーディネーターが率先してやることです。そういうコーディネーターの行動が、その場の新しい規範をつくっていきます。もし、その意見を攻撃するような発言があった時は、絶対的に守る発言をします。

「こういう意見を出し合うことがこの場の本当の目的なので、それを封じてしまうと、単に今までの延長線上の解決策になってしまいます」とか「こういう意見や思いを持っている方がいるということですね。多様な見方をみんなで共有することによって全員でよくなっていくのだと思います」といった感じです。「承認」することで、恐れを乗り越えて発言しようとする行為自体をしっかりと保護するのです。

「リーダーの変革にも活用可能な変化のメカニズム

「許可」のステップで「組織に新しい規範が生まれる」ことを奨励し、「誘導」で新しい規範の芽を出やすくし、「承認」で過去の恐れや呪縛から多くの人を解放して、新しい組織の規範づくりにみんなで挑んでいく。
そんなプロセスがオフサイトミーティングには内包されています。

リーダーが組織を変革していく時にも、この原理は使えます。
リーダーが改革を宣言し(従来の規範にとらわれず、それぞれのメンバーが思うことの発言や行動を奨励=許可)、隠れていた多様な意見が出やすいような環境をつくります(社内でオフサイトミーティングや1on1を展開するなどがこれにあたります)。
そこから生まれた動きをリーダーが見守ったり、支援してあげる。あるいは出てきた意見に耳を傾け、一緒に考える、などの行為が「承認」にあたります。
それらを積み重ねることによって、組織内には心理的安全性が高まり、自由に発言、行動する挑戦文化の芽吹きが促されるのです。

さまざまな変化の工夫を内包するオフサイトミーティング

今回ご紹介した3ステップは心理的安全性を高めるための重要なプロセスですが、ほかにも、オフサイトミーティングには人の心理・身体・思考に影響を与える場づくりの工夫が詰まっています。

最近、オフサイトミーティングのコーディネーター養成を行なう機会が増えています。そこで時々聞かれる感想が、「参加している時は簡単そうなミーティングだったけど、いざ進行側に回るととても難しいですね」というものです。私たちはあまり強制的な感じを持たれることなく、できるだけ自然に場の運営をやりたいと思っています。参加者の自発性を大事にするため、その場の人の発言で進行がまるっきり変わってくることも日常茶飯事です。

こうした柔軟性と、場づくりの中心軸を意識したバランスをとっていくことがオフサイトミーティングの基本技術だと思っています。

組織はたえず揺れ動きながら、さまざまな変化に対応していかなければなりません。多様な人々をいかにまとめ、生かしていくかは、ますます重要な課題になります。そういう状況の中で、オフサイトミーティングのような場を組織内に増やし、組織の古い規範を壊しつつ、みんなで新しい生き方や働き方、仕事のスタイルを身につけていく。そんな新しい時代の文化創造にオフサイトミーティングをどんどん活用していただけたら本望です。

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著者プロフィール

高木 穣

高木 穣

YUTAKA TAKAKI

組織変革への重要なファクターである、”場”づくりのプロフェッショナル。その技はスコラの中でもトップクラス。“場”の空気を読んだ振る舞いで”安心感”を醸成し、互いに自然体で話し合える”場”を創り出す。

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