「深いなぁ」とみんなが認めたジブンガタリ
三輪さん:最初のミーティングに参加するとき、「風土改革ってどんなことするんだろう」と思ってスコラさんの本を読んでいきました。とくに興味を覚えたのは「真面目な雑談」という考え方です。育児しながら働いていると、飲みニケーションはほとんどありませんし、周りの人たちとじっくり話す機会が減ります。業務時間中に深いコミュニケーションがとれるのは、とてもありがたいことだと。
ただ、実際に自分たちでやろうとしても、ファシリテーションのスキルや第三者の立場ではないといった点から、うまくいかないことがあるんですね 。スコラさんの力を借りて「真面目な雑談」が実現できたらすごくいいなと思いました。
最初の取り組みは、個人のミッションを言語化することでした。組織と個人の重なりの図で示した赤い円の部分です。

お互い助けあえる関係性を築くといっても、個々の「やりたいこと」が明確でないと無理なんです。自分のやりたいことがわかれば、周囲に協力を求めたり、人を集めたりといったアクションに移れます。
それにミッションを語りあうだけでも、多少はモヤモヤが晴れてスッキリするかもしれない、という期待がありましたね。部内で参加者を募ったら、9人の希望者がありました。
楊さん:全員が管理職でないメンバーで、女性4人と男性5人が手をあげてくれました。技術系の方、庶務系の方がいて、年齢層も20代から50代 と幅がありました。最初にほぼ1日のオフサイトミーティングを開き、同じメンバーで半日を2回つづけて、計3回のオフサイトミーティングを開きました。
私が1回目に衝撃を受けたのは、心理的安全性や親密性がすごく感じられたことです。最初にそれぞれ自分のことを語る“ジブンガタリ”※ですね。生い立ちから現在の気持ちまで、家族以外に言えないことも言える場になったのは衝撃でした。ひとりで悩みを抱えるのでなく、みんなで一緒に悩んでいるという連帯感や仲間意識が芽生えたのは大きかったと思います。
【※ジブンガタリとは】
チームメンバーの関係性を深めるために全参加者が自分自身について語ること。複数回オフサイトミーティングを実施するとき、比較的序盤にやることが多い。幼少期や学生時代の出来事、人生の転換点、大切にしている信条、将来の夢などをありのままに語ることで、お互いの人となりを深く知る場となる。自分と職場の“ありたい姿”を率直に語りあうために心理的安全性を醸成することを目的として実施した。

三輪さん:事務局が意図をもって選んだ人たちではないから、名簿を見たときは「どんな場になるんだろ」と予想不能でした。自分の想いを率直に語りあうオフサイトミーティングは、社員だけではなかなか場づくりができません。スコラさんがしっかりファシリテートしてくれるから、みんな安心して語れたところがあります。
2回目にメンバーから「自分たちだけ話すのはおかしいんじゃない?スコラさんたちにもジブンガタリしてほしい」とリクエストがあって、岡崎さんと山科さんにも語ってもらって(笑)。
岡崎:第2回がはじまったとたん、参加者からリクエストがありましたね(笑)。私たちも時間をいただいて話をする機会をもらいました。
ああいうリクエストが出るのはジブンガタリの中身が濃かったからですし、第1回のあと「すごく深いなぁ」って三輪さんたちと話したんですよね。参加者たちが自主的、自律的に考えて活動していた証だと思います。
三輪さん:「ジブンガタリは初めが肝心」と岡崎さんから聞いていたので、どうなるかと思っていたら、最初に手をあげて話してくれた方が本当に素晴らしくて。みんなトップバッターに引っ張られて、予想以上に深いジブンガタリになりました。
内田さん:これまで職場内に語る機会、語る場がなかったんだという発見がありましたね。
事務局の自律的な動きが成果を高めた
岡崎:みなさんのジブンガタリが終わったあとは、通常は個々のミッションを言語化する取り組みに進みます。ですが、ここで壁にぶつかりました。先ほど三輪さんが話された仕事を通じた「貢献の実感がない」という問題です。
三輪さん:自分が開発した技術はどう活用されているか、社会にどのような価値を生んでいるか、みんな自覚できてなくて、自信がもてなかったんですね。誰がお客様なのか、どのような価値を提供してきたのか、大切なことを考える機会を持てないまま働くからモヤモヤしていました。ミッションに進むのはちょっと早いかも、という話になりました。
岡崎:これは私たちがご支援しているとよくあることなのですが、顧客と直接接点が少ない技術部門やスタッフ部門の方は自分が担当している仕事の価値を感じづらいんですよね。
楊さん:自分たちの仕事が役立っているという認識を深めないと、自信をもって「自分はこれをやります」とミッションを宣言できませんからね。
岡崎:次回の進め方を事務局の皆さんと話しあうなかで、いったん“シゴトガタリ”を入れてみてはどうかというアイデアが出ました。ジブンガタリと同じように、自分の担当業務について深く考えて語っていく取り組みです。
どんな仕事でも必ず相手がいますから、誰に対してどのような貢献をしているのか、仕事で相手から言われてうれしかったことは何かを、みんなで語り合いました。


