岡崎:ジブンガタリ、シゴトガタリを経て、改めて自分のミッションを考えるための問いのサイクルを考えましたが、皆さんとても苦労されていましたよね。

三輪さん:自分のミッションを言語化したあと、会社への貢献を考えると、部門のミッションと合致しているかどうかの問題になりました。自分のミッションと部門のミッションが重なる部分が行動すべき領域になるからです。でも、「部門のミッションは何だっけ?」という疑問に到達してしまったんですよね。

楊さん:ワークシートに記入していくとき、自分のミッションについては書けるのに、部門のミッションとの重ね合わせを考えようとすると手が止まってしまう。部門のミッションは自分では決められませんからね。

三輪さん:重なる部分を探るには、部門のミッションを深く理解する必要があります。自分のミッションを言語化する取り組みは、ミドルや上級職にも必要だという話になりました。

内田さん:ちょうど同じ頃、私のほうでGMとEE(技術専門職)でオフサイトミーティングをスタートしました。「個人がやりたいこと」に対して、こちらは「部門としてやりたいこと」です。先ほどの図 (組織と個人の重なりの図)でいえば、青い円で示した部分です。部門としてどうありたいか、実現したいことは何かを言語化する取り組みで、最終的には部門のミッション、ビジョン、バリューを再定義する方向に進みました。
組織と個人の重なりの図は、あとから活動を振り返って気づいたことです。三輪さんたちの活動とタイミングが合ったのは本当にたまたまでうまく合流することができました。

三輪さん:GMメンバーの活動が進んだところで、内田さんにゲストとして参加してもらって、部門のミッション、ビジョン、バリューや中期計画について話してもらったこともありました。

内田さん:ミッションを言語化する取り組みは、マネジャー層にも当てはまると考えて進めました。私たちGM3人とEE1人で当時の部門ミッションについて議論し、現在の状況に合わせて新たにミッション、ビジョン、バリューを策定しようという結論に至りました。
当時の部門長に伝えると、「みんなの意見を聞きたい」と言われ、マネジャー層を集めた「部門ミッション・ビジョンについて語る会」を開くことになりました。

岡崎:「部門ミッション・ビジョンついて語る会」では、すでに存在した技術革新部の変わらない方針であるミッション・ビジョンに対して、共感する部分や違和感のあることについて率直に語り合いました。参加者に1冊ずつスケッチブックを渡して、プレゼンしてもらいましたね。グッドアイデアでした。
事務局のみなさんが自主的に工夫されて、独自の活動に高めていったのは本当に素晴らしいと思いました。

三輪さん:初期のミーティングで、山科さんが何かの話題で「私たちPDの仕事は、社内にプロセスデザイナーを育てることです」と言われたので、私自身の目標は「この活動を通して自分がプロセスデザイナーになることなんだ」と思ったんです。

岡崎:初めから自律的に動く覚悟を固めていたからポテンシャルが高かったんですね。「部門ミッション・ビジョンについて語る会」で出た意見を集約し、「ミッション・ビジョン・バリュー」を策定し直そうという動きへとつながっていきました。この流れはとてもよかったですね。上層部で決めた「ミッション・ビジョン・バリュー」を、一方的に部門の皆さんに周知するということではなく、まず策定し直すことが必要かということを、部門の皆さんに問うたわけです。部門全体として意思をもって動いていこうというプロセスを上手につくることができていたと思います。
このあとは、私たちは直接オフサイトミーティングの場に 入ることはせずに、全体的なプロセス設計を事務局のみなさんと話し合いながら、みなさんが主体的に進めていきました。

内田さん:私たちがミッション、ビジョン、バリューを策定したあとは、部門全体での「バリューについて語る会」が開かれることになります。参加者を、だいたい半分ずつに分けた集まりを2回開き、少人数のグループに分かれて私たち上級職がファシリテーターを務めました。自分たちなりにオフサイトミーティングから学んだことを展開していった形です。

三輪さん:初めのミーティングから数えると約2年の活動で、個人的に多くのことを身につけたと思います。

楊さん:私もすごく勉強させてもらいました。たとえばアンケートひとつ取るにも、全体の設計や設問の表現など、いつのまにか丁寧な仕事ができるようになっているんです。技術者の本業とは別のスキルが身について、自分でもすごく成長したなと思います。

岡崎:そう言っていただけると、私たちもうれしいです。これからもみなさんのご活躍に期待しています。本日はありがとうございました。

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