経済産業省「2024年版ものづくり白書」によると、製造業では「若者離れ」と「高齢化」が進行している状況にあります。加えて、工場設備の老朽化や、ベテラン人材の退職に伴う人手不足も業界全体で大きな課題となっています。
KHネオケム株式会社 四日市工場では2022年に労働災害や工場での生産トラブルが発生。経営層は「工場の設備保全などハード面の対策だけではなく、働く人の気持ちを変えなくては工場として将来生き残っていけない」と危機感を抱きました。
そこで、組織風土改革を推進するというミッションのもと、新部署「企画部」が発足。工場で立ち上がる部門横断プロジェクトなどを束ねる役割を担うとともに、組織風土改革の牽引役となる部署です。
企画部で議論を重ねた結果、「働く人同士の関係性の質を変える」アプローチに共感し、スコラ・コンサルトとの協働をスタート。2023年7月から組織風土改革に向けたプロジェクトをともに進めてきました。
相談当初、どのような課題をお持ちだったのか詳しく伺いました。

仕事をする人の「気持ち」を変えなくては工場として将来生き残っていけない

ー 組織風土改革をスタートしたきっかけをはじめ、その目的をお聞かせください。

松岡部長:当社では2022年に、労働災害や生産トラブルが発生しました。そのときに組織風土の問題があるかどうかはまだ認識していませんでしたが、設備保全などハード面での対策だけではなく「人の気持ち」「組織風土」に関しても対策を取らなければという経営者の思いがあり、「風土改革に取り組んでくれ」とミッションを背負って企画部の責任者に任命されました。

二本松部長:「このまま業務を続けていって、工場として将来生き残っていけるのか?」という話も出ました。需要に対し生産量が追いついていないなど操業に関する課題の多い期間でもあったので、「きちんと工場としての役割を果たさなきゃいけない」「このままではまずいな」という考えに至りました。
社員の離職も課題だったため、生産トラブルが多いことをただ嘆くだけではなく、仕事をしている人の「気持ち」に向き合う必要があるんじゃないかと。

皆さんが「言いたいことが言える」「自分たちで工場のことを考える」「人任せしない」「自分ができることをしっかりやろう」といった心持ちになれるなど、働きがいのある職場にすることが、強い工場、生き残っていける工場につながっていくんじゃないかと、組織風土改革の取り組みを位置付けていました。


黒川工場長
:四日市工場に工場長として赴任した当初、「社員の皆さんが自信をなくしてしまっている」という印象を受けました。
たとえば、悪い情報がなかなか上に上がってこない。なんとなく受け身で、こちらから問いかけても固まってしまう。「なにか注意されるんじゃないか」と縦のコミュニケーションを怖がっている印象でした。同時に、横のコミュニケーションも不十分で、他部署の人と話すにも上司を通してやり取りしている。
「こうした状況を変えていかねば」と考えたことがきっかけですね。「主体性を持って行動してほしい、成長を実感できるようになってほしい」と思いました。

二本松部長:「そのときになってみないと、わからなかったことが多い」など、我々管理職にも問題がありました。
たとえば、生産トラブルが起きて振り返るなかで、実は所定のルールが守られていなかったとか。「それって今回だけかな?」と問うと、「実はほかでも……」と、次々わかってくる。
ミスがあったときに「自分事」として捉えられていないのは、良くないと思っていました。その場だけ手を打っても、足元をしっかりしなくては根本解決にはならないなと。四日市工場にとって変革のポイントだと受け止めていました。

ー 組織風土改革と最初に聞いたときは、率直にどう感じましたか?

松岡部長:それまで社内で「組織風土改革」という言葉を聞くことはありませんでした。


しかし、私自身は「工場長や副工場長が言ったから」と深い議論にもならず、物事がパッと決まってしまう場面などに怖さを感じていました。
「自分の職責を果たすんだ」という、各々の内発的動機から出てくる雰囲気に変えていかなくては、という思いはありましたね。

木下さん:私も、「組織風土改革」について考えたこともなかったです。でも、企画部にアサインされて以降、松岡部長と二人でたくさんの対話を重ねました。そのなかで、自分の内面に今まで溜まっていた、思っていても言えていなかったことがあふれるように出てきて。「上の人、現場のこと全然見てないよね」「みんなどこかに『しょうがない』みたいな気持ちがあるよね」とか。自分で言葉にしてみることで「あ、やっぱりこれって変えなくちゃいけない」と、スコラさんに入っていただく前の議論で気づきました。

 

日頃から受け身な雰囲気を問題だと感じていた

ー 工場の現場で、改革の取り組み以前に感じていたことはありましたか?

平澤さん:午起一課が改革の最初の部門変革実践部署に選ばれたのも「何か理由があるんやろな」と思いました。私自身は、今の状況が良いように思えていなかったからです。働く人同士の雰囲気はすごく良いのですが、「言われたことをやっときゃいいんじゃない」という受け身の姿勢が常態化していると感じていました。

田口さん:課長から呼ばれて「午起一課として改革に取り組むのに、コアメンバーは誰がいいと思う?」という話があり、「こんな人がいいんじゃないか」と話をして、それが今の組織風土改革のコアメンバーになっています。
「改革やるよ」と聞いて、「 交替勤務(※1)チームにも伝わるアクションを起こして、ちゃんとやっていくよとアピールをしてほしい」と伝えました。「受け身」の姿勢が強いので、交替勤務者がやりやすい環境をつくるフォローが必要だと思ったんです。あと、「いろんなところで会話が少ないのかな、もっと積極的に話したらいいのに…」というふうにも思っていました。
※1 工場を24時間稼働させるためのシフト勤務のこと。

眞野さん:内心思っていることを言いにくい人たちもいたり、マイナスな感情もあったような気がして、雰囲気があまり良くないと思っていたのは事実です。部署間の壁も感じていました。だから、改革に期待はありました。